大判例

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福岡高等裁判所 昭和25年(う)27号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(理由)

よつて記録を調べてみると、起訴状には公訴事實として「被告人前田吉信(前田正信と記載してあるのは誤記と認める)は山崎義文等と共謀の上右山崎が税關の免許を受けないで北緯三〇度以南である大島より運搬せる黑砂糖六千斤位を被告人薗田善右衞門等にその情を告げ日本の土地に陸揚せられたい旨申し向けて同人等をして第一の行爲(昭和二四年六月一日頃出水郡米之津荒崎海岸に陸揚して輸入した行爲)をなさしめてこれを敎唆した」と記載し、罰状として關税法第七六條、刑法第六一條を揚げているところ、原審では、訴因及び罰條變更の手續を經ないで直ちに、犯罪事實として「被告人前田吉信は薗田善右衞門、山崎義文、薗田靜雄、中村鐵雄等と共謀して、法定の除外事由がないのに税關に申告してその檢査と免許を受けないで、昭和二四年六月一日頃出水郡阿久根町沖合において、右山崎等が北緯三〇度以南である舊大島郡下から船名不詳の運搬船で同所まで運搬した黑砂糖五、九七四斤位を、鮮魚運搬船幸福丸に積み替え同日同郡米之津町荒崎海岸まで航行してこれを同所に陸揚し、よつて貨物の密輸入をなした」と判示し、罰條として關税法第七六條第一項、刑法第六〇條等を適用して處斷していることは、所論のとおりである。辯護人は、裁判所は訴因に拘束されるものであるから、密輸入敎唆の訴因に對し密輸入の共同正犯と認定したのは違法であると主張するから、按ずるに、敎唆犯と共同正犯とは觀念的には截然と區別せられているのであるが、實際問題としては兩者殊に敎唆犯と實行行爲を伴わない共同正犯いわゆる共謀共同正犯との關係は頗る微妙であつて兩者の區別は必ずしも分明ではなく、同一の事實關係にあつても、これを見る人によつて、敎唆犯と考えられ或いは共謀共同正犯と斷ぜられることも往々にして起り得るのである。本件について考えてみるとなるほど起訴状には、事實關係として、「薗田善右衞門等に密輸入する品であることを告げて内地に陸揚せられたい旨申し向けて、同人等をして内地に陸揚させた」との趣旨の記載をしているが、右記載のような事實關係においても、これを共謀共同正犯と認めるのを相當とする場合もないことはないのであつて、結局本件は、訴因たる事實關係は同一であるが、檢察官はこれを敎唆犯と解し、原審はこれを共謀共同正犯と斷じたものと記録上見られないこともないのである。そうすると本件はいわゆる審判の請求を受けない事件について判決をしたという違法はないのであつて、ただ罰條變更の手續を經ないで起訴状記載の罰條以外の罰條を適用した點において、訴訟手續に違法があるに過ぎないものと解すべきである。しかしながら、敎唆犯も共同正犯も法定刑は同一であるから、右の違法は必ずしも判決に影響を及ぼすことが明らかであるといい難く、結局原判決を破棄する事由とするに足りない。

從つて、論旨は理由がないことに歸着する。

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